文化的な生活

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ホテルローヤル/ 桜木紫乃

 直木賞受賞作。桜木紫乃氏の作品はコレがはじめてです。「ホテルローヤル」というラブホテルを中心とした、様々な男女の物語を収めた連作短編集。物語の中で、ホテルローヤルは廃墟だったり、店を畳む寸前だったり、開店前だったり、それぞれの時間で男女の物語があります。 
ホテルローヤル (集英社文庫)

ホテルローヤル (集英社文庫)

 

 

 以下読書感想文
 ・「僕はこの十年間、男も女も、体を使って遊ばなきゃいけない時があると思いながら仕事をしてきました。自分はそのお手伝いをしているんだと言い聞かせながらやって来ました。間違ってはいなかったと思います。」

  短編 えっち屋 にて、アダルトグッズ販売社員の宮川が、ホテルローヤルを切り盛りする雅代に言ったセリフ。すべての短編が、幸不幸関係なく、楽しい物も悲しい物もごちゃまぜで、男女の交わりのあり方について、ラブホテルを舞台にして書かれた物語だ。読む際に、この短編は、こういう男女のあり方なんだなあ、と簡単にまとめながら読んでみると良いかもしれない。上に引用した えっち屋 は、他人の性を長年そばで見てきた二人自身の性の話。雅代が宮川に惹かれたのは、そこに共通点を見出したからなのだろう。

 
・ふたりとも等しく年を重ねていることがわかる。それはそれで、幸福なことに違いなかった。
 短編 バブルバス にて、主人公の恵の思いだ。この短編は非常に幸福にあふれている。長年連れ添った幸福(?)な夫婦のお話。ラブホテルでのほんの数時間が、恵の人生に彩りを与える。すごく幸せな気分になる。
 
 ヌード写真、不倫、お金、いろんな性を描いた本作品。ラブホテル「ホテルローヤル」にて、それぞれが何かを失い、何かを生み出していく。ラブホテルの一室でのほんの数時間で、確実に何かが変わっている。何が変わるのか、それに向き合い答えを出そうとしている作品だと考える。
 
 
 面白かった表現をすこし
 
・みな素人だということがすぐにわかる。虚栄心を隠す技術がない。モデルのようにふるまいながら、自分を「モデルみたい」だと思ってしまっている。
 プロのモデルと素人の違いはここにあるのかもしれません
 
・妻と校長の関係を知ってしまった自分のほうが、ずっと悪いことをしたような気分になった。あの罪悪感からはまだ脱出できていない。
 この罪悪感は、ありますね。具体的には思い出せないけれども、知りたくないことを知るまいと動いている気がします。私も。このことに関しては、本の主題とは関係ないけど、どういう罪悪感なのか、きちんと考えてみたいところです。